HbA1cの概要
HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンに糖が結びついた割合を示します。血糖値が採血時点の状態を反映しやすいのに対し、HbA1cは過去1〜2か月程度の血糖状態を考える材料になります。短期間の食事や運動だけでは大きく変わりにくい一方、直近1か月程度の変化もある程度反映されます。
何を調べる検査か
糖代謝の状態、糖尿病や糖尿病予備群の可能性、生活習慣改善や治療中の血糖管理状況などを確認する手がかりになります。血糖値、尿糖、糖負荷試験、グリコアルブミン、脂質、血圧、腎機能もあわせて確認します。
5.6・6.0・6.5%は、どう読み分ける?
以下は主に糖尿病の治療を受けていない成人が、健診後の確認事項を整理するための表です。HbA1cはNGSP値、単位は%です。判定記号だけでなく、血糖値、過去の推移、症状、結果表の指示も確認します。
| HbA1c(NGSP) | 健診結果の意味 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 5.6〜5.9% | 厚生労働省の保健指導判定値に該当します。これだけで糖尿病や境界型と決まるわけではありません。 | 血糖値、肥満・血圧・脂質、糖尿病の家族歴などを確認。生活習慣の相談と、追加検査の必要性を結果表や医療機関で確かめます。 |
| 6.0〜6.4% | 6.5%未満でも、精密検査を勧める健診後の区分です。 | 血糖値の再確認や75g OGTTなどを相談します。「受診勧奨値未満だから来年まで待つ」と自己判断しないでください。 |
| 6.5%以上 | 受診勧奨判定値に該当します。糖尿病型の基準の一つでもありますが、HbA1cだけで確定診断はしません。 | 定期通院していない場合は医療機関へ連絡して受診します。血糖値と症状を含めて評価を受けましょう。 |
適用条件: 出典: 厚生労働省の令和6年度版プログラム。特定健診は主に40〜74歳が対象で、特定保健指導の対象かどうかは腹囲・BMI・他のリスク・服薬状況なども含めて決まります。妊娠中、小児、治療中の方はこの表で一律に判断せず、担当医の説明を確認してください。5.6%未満でも、血糖の異常や症状、再検査の指示があれば相談が必要です。
健診の判定と、糖尿病の診断は別
日本糖尿病学会の診断指針では、HbA1c 6.5%以上に加え、空腹時血糖126 mg/dL以上、75g OGTTの2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上が「糖尿病型」の基準です。健診の随時血糖の受診勧奨値と、診断で使う随時血糖の値を混同しないようにしましょう。
通常は別の日の検査で糖尿病型を確認し、そのうち少なくとも1回は血糖値による確認が必要です。同じ採血で血糖値とHbA1cがともに糖尿病型なら、1回の検査でも診断できる場合があります。典型的な症状や過去の診断記録なども含め、医師が判断します。
例えば、HbA1cだけが6.5%以上だった場合は、再検査でもHbA1cだけを測って判断を終えるわけではありません。血糖検査を含む確認が必要です。家庭の簡易血糖測定器やCGMの値は診断用の静脈採血の代わりにはなりません。受診時に記録を見せることは役立ちます。
糖代謝の詳しい検査は空腹時・随時血糖の見方と75g OGTT(糖負荷試験)も確認できます。検査の種類・再検査日程は結果を見た医師に相談し、症状がある場合は予定日を待たず連絡しましょう。
治療中の目標値は別です: すでに糖尿病の治療を受けている方のHbA1c目標は、年齢、低血糖の危険性、合併症などに応じて個別に設定されます。健診の6.5%という線をそのまま全員の治療目標にせず、担当医に自分の目標と次の検査時期を確かめてください。
再検査を予約するときに確認する3つのこと
- 何を測る予定か: HbA1cだけか、空腹時血糖も測るか、OGTTを行うかを確かめます。HbA1c単独なら絶食は不要ですが、同時の検査によって準備が変わります。
- 食事・飲み物の時間: 「前日の何時まで食べてよいか」「当日の水・お茶などはどうするか」を予約先へ確認します。特にOGTT前は、自己流の糖質制限で検査条件を変えず、案内された食事と絶食の条件に従ってください。
- 薬の扱い: 糖尿病薬・インスリンを含め、薬名と使用時間を伝えて当日の指示を受けます。検査のために自分で薬を中止・減量したり、追加したりしないでください。
初診予約で検査の種類がまだ決まっていなければ、その旨を確認します。食べてしまった場合や準備ができなかった場合は、隠さず食事の時刻・内容を伝え、検査を行うか変更するかの判断を任せましょう。健診前に食べた・飲んだ場合の伝え方、再検査・精密検査の手続きも参考になります。
結果表と一緒に持参する確認メモ
HbA1cの数字だけを写すより、次の情報を同じメモにまとめると、採血条件や値のずれを相談しやすくなります。
- 今回と過去の結果表: 検査日、HbA1c(NGSP)、血糖値、空腹時・随時の表記と判定をそのまま持参。血算、腎機能、尿検査のページも含めます。
- 採血前の状況: 最後の食事・飲み物の時刻、発熱などの体調変化、生活や体重の変化を記録します。
- 値の解釈に関わる背景: 貧血や鉄剤治療、最近の出血・輸血、透析、妊娠の有無、薬・サプリメントを伝えます。
- 聞きたいこと: 「今回の血糖は空腹時の値ですか」「次は血糖検査やOGTTも必要ですか」「いつ再検査し、どんな症状なら先に連絡しますか」と確かめます。
相談先はかかりつけ医、内科、糖尿病内科などです。選び方に迷ったら健診の異常は何科に相談する?を確認してください。
高い場合に考えられること
- 過去1〜2か月程度の血糖が高めに推移していた可能性があります。
- 血糖値、尿糖、中性脂肪、血圧、腹囲、BMIなどもあわせて確認すると、生活習慣病リスクを整理しやすくなります。
- HbA1cが高くても、それだけで病名や治療方針は決まりません。医療機関で再検査や追加検査を確認しましょう。
血糖・尿糖・OGTTとあわせた見方
HbA1cは便利な検査ですが、血糖値や尿糖と同じ情報を見ているわけではありません。結果が一致しない場合も、再検査や別の検査で確認することがあります。
| 組み合わせ | 確認したいこと |
|---|---|
| HbA1cと血糖がともに高い | 糖代謝の異常が続いている可能性を確認します。症状、過去の結果、尿糖、脂質、血圧、腎機能もあわせて相談します。 |
| HbA1cは高いが血糖は高くない | 採血時の血糖だけでは見えない過去の血糖上昇、または貧血・腎機能・検査条件などの影響を確認することがあります。 |
| 血糖は高いがHbA1cは高くない | 一時的な高血糖、食後採血、急な血糖変化、赤血球の状態などを確認します。必要に応じて再検査やOGTTを検討します。 |
| 尿糖も陽性 | 血糖が高い時間帯があった可能性や腎臓での糖の扱いを確認します。血糖、HbA1c、腎機能、服薬状況をあわせて見ます。 |
| 妊娠中・出産後 | 妊娠糖尿病の確認ではOGTTなど別の検査が使われることがあります。健診結果だけで判断せず、産科や医療機関の指示を確認します。 |
HbA1cの解釈に注意したい場合
HbA1cは赤血球やヘモグロビンの状態に影響を受けることがあります。次のような背景がある場合は、血糖値、グリコアルブミン、フルクトサミンなど別の指標とあわせて確認することがあります。
- 貧血、鉄欠乏、最近の出血、輸血、透析、腎不全、肝疾患がある
- 妊娠中または出産後である
- ヘモグロビン異常症など、赤血球やヘモグロビンに関わる病気を指摘されたことがある
- 家庭での血糖測定や血糖値と、HbA1cの印象が大きく合わない
低い場合に考えられること
HbA1cが低い理由には、平均的な血糖状態のほか、出血や赤血球寿命の変化などもあります。平均を反映する検査なので、低い値だけから、その時に低血糖が起きているかを判断することはできません。気になる症状や普段の血糖測定とのずれは、担当医へ伝えてください。
関連する病気
次の病気や状態と関連することがあります。ただし、検査値だけで診断はできません。
関連する検査項目
生活習慣で見直したいこと
食事の内容と時間、間食、甘い飲み物、運動量、睡眠、体重変化を見直す入口になります。ただし、生活習慣だけで検査値が必ず下がるとは限りません。すでに治療中の場合は、薬やインスリンの調整を自己判断で行わず、主治医に相談してください。
医療機関に相談したいケース
- HbA1cが受診勧奨判定値の目安を超えている
- 血糖値も高い、または尿糖が陽性だった
- 口渇、多尿、体重減少、強い疲労感などがある
- しびれ、視力の変化、傷が治りにくい、感染を繰り返すなど気になる症状がある
- HbA1cと血糖値の結果が大きく食い違う
- 貧血、腎機能低下、肝機能異常、妊娠、輸血など、HbA1cの解釈に影響しうる背景がある
- 糖尿病治療中で、健診結果と普段の測定値に差がある
よくある質問
HbA1cが6.5%以上で2回続いたら、糖尿病と決まりますか?
日本の診断指針ではHbA1cだけの反復検査で確定しません。血糖値で糖尿病型を確認する必要があります。HbA1cをもう一度測れば十分と考えず、血糖値を含む評価を医療機関で受けてください。
血糖値は正常範囲なのにHbA1cが高いときは、貧血のせいですか?
貧血だけが原因とは限りません。血糖値は採血時点、HbA1cは過去の血糖状態を反映するため、採血時以外の高血糖でもずれます。鉄欠乏、出血・輸血などの影響もあり得るので、過去の結果や治療歴を伝え、必要な再検査を相談しましょう。
血糖・HbA1c・OGTTの違いを図と合わせて確認する
国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターでは、採血時の血糖、HbA1c、尿糖、糖負荷試験がそれぞれ何を調べるかを解説しています。再検査の目的を知りたいときに役立ちます。
糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」関連記事
参考・出典
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」 — 現行掲載版と対象条件(確認日: 2026-10-06)。
- 同プログラム 別添資料(PDF) — HbA1cの判定値、治療の有無による健診後の対応(確認日: 2026-10-06)。
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第1章(PDF) — 診断での血糖値の確認、OGTT、HbA1cと血糖がずれる場合(確認日: 2026-10-06)。
- 同ガイドライン 第2章(PDF) — 治療目標を個別に設定する考え方(確認日: 2026-10-06)。
- 糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」 — HbA1cの意味、血糖・尿糖・OGTTとの違い(確認日: 2026-10-06)。
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus「Hemoglobin A1C (HbA1c) Test」 — 薬・妊娠の申告、赤血球などの影響(英語、確認日: 2026-10-06)。
- 米国NIDDK「The A1C Test & Diabetes」 — HbA1c単独の採血準備と短期の血糖変化を捉える限界(英語、確認日: 2026-10-06)。
医療情報に関する注意
このページは、健康診断や血液検査に関する一般的な情報です。診断、治療、服薬変更、受診不要の判断を行うものではありません。検査値の解釈は、検査機関、測定方法、年齢、性別、既往歴、服薬状況、症状などによって異なります。気になる結果がある場合は医療機関へ相談してください。