HDLは何を測る検査か

HDLはコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きに関わる粒子です。採血で測るHDLコレステロール(HDL-C)は、その粒子に含まれるコレステロールの量で、回収する機能そのものを直接測る検査ではありません。

「善玉」という呼び名だけで安心・危険を決めず、LDLコレステロール、中性脂肪(TG)、血圧・血糖と合わせて動脈硬化のリスクを確認します。

40未満の目安と、人間ドックの30〜39・29以下の違い

厚生労働省の健診プログラムでは、HDL40 mg/dL未満を保健指導の判定値としています。HDL単独の受診勧奨判定値は示されていませんが、低値を放置してよいという意味ではありません。人間ドックの判定表には、低値の程度に応じた区分があります。

基準・値(mg/dL)判定の意味次に確認すること
厚労省: 40未満保健指導判定値。単独の受診勧奨判定値の設定なし。LDL・TG、喫煙・運動・体重、結果表の受診指示を確認します。
人間ドック: 30〜39C区分。再検査・生活改善。指定された再検査時期を確認し、生活習慣の見直しと他の異常への対応を相談します。
人間ドック: 29以下D区分。精密検査・治療。結果表を持って医療機関へ。原因の確認、追加検査や治療の必要性は診察で判断します。
人間ドック: 40以上HDLの数値区分ではA。高値の上限は設定されていません。極端な高値や他の脂質の異常があれば別に確認します。脂質全体が正常という意味ではありません。

人間ドックは日本人間ドック・予防医療学会の2026年4月1日改定表に基づく成人の目安です。脂質の判定は空腹時採血が前提です。施設の判定、年齢・既往歴、治療中の状態によって扱いは異なり、結果表の指示が優先されます。小児・妊娠中・治療中の方は、この表だけで判断せず担当医へ確認してください。

例えばHDL35ならCの範囲、28ならDの範囲です。どちらも40未満ですが、35の再検査・生活改善と、28の原因を確かめる受診は同じ扱いではありません。再検査時期が書かれていないときは、健診機関に「いつ、どこで再検査を受けるか」を確認しましょう。

出典: 厚生労働省・健診判定値(別紙5)、日本人間ドック・予防医療学会・2026年判定区分表。

低いときは、生活習慣以外の原因も確認する

喫煙、肥満、運動不足はHDL低値に関係します。一方、手術後、強い炎症、肝臓の病気、薬の影響などでも低下することがあります。急に下がった場合は、前回の結果と、病気・手術・薬の変更時期を伝えてください。

25 mg/dL未満のような極端な低値では、まれな遺伝性の病気も含めて原因を調べる必要があるため、医師に相談しましょう。この値だけで遺伝性の病気と診断されるわけではありません。専門医への紹介や追加検査が必要かは、再検査や家族歴などを踏まえて判断されます。

出典: 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」Q9。

高いHDLで、LDL高値は打ち消せない

HDLが高くても、その数値をLDLから差し引いて安心することはできません。極端な高値の人で心血管疾患による死亡が多かった観察研究もありますが、高値だけで病気や原因が確定するわけではありません。飲酒など他の要因も影響するため、脂質全体と生活背景の確認が必要です。

例えばHDL105・LDL160 mg/dLなら、HDLは上の人間ドック表では40以上の範囲でも、LDL160の評価は別に必要です。LDLの目標値は糖尿病、慢性腎臓病、心筋梗塞・脳梗塞の既往などで変わります。高いHDLを理由に、LDLの再検査指示や処方薬を無視しないでください。

結果表で高値を指摘された方、以前より大きく上がった方は、過去のHDL・LDL・TG、飲酒の量と頻度、薬の情報を持参しましょう。HDLを上げる目的で飲酒を始めたり増やしたりする必要はありません。

出典: 日本動脈硬化学会・包括的リスク評価(第2章、21〜22頁)、脂質管理の目標(第3章、71〜72頁)。

受診時に持参する結果と、伝える情報

今回と過去の健診結果、お薬手帳を持参します。わかる範囲で次の点をメモしておくと、HDLの変化や治療の必要性を相談しやすくなります。

持参・確認するもの具体的な内容確認したい点
脂質の結果HDL、LDL、TG、総コレステロール・Non-HDL、測定日。HDLだけの異常か、他の脂質にも異常があるか。過去から続いているか。
採血条件と最近の体調採血時刻、最後に食べた時刻、病気や手術の時期。結果を比較できる条件か。再検査が必要か。
病歴と家族歴血圧・血糖・腎機能、心臓病や脳梗塞の経験、家族の脂質異常や若い年齢の心臓病。HDL以外のリスク、LDLなどの管理目標。
薬と生活の変化処方薬・市販薬・サプリメントと変更時期、喫煙、飲酒量と頻度、体重・運動の変化。低値・高値の背景、続けられる生活改善、薬の必要性。

Non-HDLは総コレステロール−HDLで、LDLなどHDL以外のコレステロールを確認する指標です。総コレステロール220・HDL35ならNon-HDLは185 mg/dLです。HDL35への対応だけでなく、この値とLDL・TGの評価も医師に確認してください。採血条件やTG高値によって、LDLの計算値の扱いが変わることがあります。

再検査前に確認する3つのこと

  1. 再検査の時期と項目: 結果表の案内を確認し、HDL以外にLDL・TG・血糖など何を測るか予約先に尋ねます。
  2. 食事と水分の条件: 空腹時の検査か、最後の食事を何時までにするか、水分は何をどの程度とれるかを確認します。同時に受ける検査の条件に従ってください。
  3. 当日の薬: お薬手帳や薬の一覧を見せ、服用時刻を相談します。処方薬を自己判断で中止しないでください。食事制限と薬の組み合わせが不安な方も事前に確認します。

食べてしまった、指示と違う時間に薬を飲んだなどの場合は、採血前に伝えてください。予約・持参物は再検査の受け方、受診先は診療科の選び方も確認できます。

急な症状は健診と別に対応: 突然の強い胸・背中の痛み、急な呼吸困難、片方の手足に力が入らない、ろれつが回らないなどの症状では、HDLの値や再検査予定にかかわらず119番を要請してください。

生活習慣はHDLだけでなく、脂質全体に合わせて見直す

  • 喫煙している: 禁煙に取り組みます。続けにくい場合は、医療機関で禁煙支援を相談してください。
  • 座る時間が長い: 無理なく歩く時間を増やし、続けられる有酸素運動へ。胸痛・息切れや心臓病などがある方は、始める前に運動の範囲を医師へ確認します。
  • 体重や間食が増えた: 食事量や甘い飲み物を見直します。LDLも高い方は肉の脂身・バター・菓子類のとり方、TGも高い方は飲酒やジュースの量を確認しましょう。

HDLの数字だけを上げることと、心筋梗塞などを防ぐことは同じではありません。LDL・TGや血圧・血糖への対応も続け、再検査で変化を確認します。持病の食事・運動制限がある場合は、その指示を優先してください。

HDLについてよくある質問

HDLが35でも、薬を飲む必要がありますか?

35は低値の範囲ですが、HDLの数値だけで薬は決まりません。低HDLへの対応は基本的に生活習慣の改善で、HDLを上げる薬による発症予防効果は確認されていません。ただしLDL・TGの異常や病歴によって薬が必要な場合があります。現在の処方を自己判断でやめず、脂質全体の治療方針を確認してください。

HDLが100以上なのにA判定でした。何を確認すればよいですか?

学会の2026年人間ドック判定表はHDL40以上をAとしており、高値の上限を設けていません。Aという文字だけで脂質全体のリスクは判断できないため、LDL・TG、値の推移、飲酒、血圧・血糖や病歴を確認します。高値の指摘や再検査の案内があれば、その指示に従って相談しましょう。

脂質異常のときの食事を詳しく確認する

肉の脂身・乳製品・魚・野菜・甘い飲み物など、食事で見直す点を確認できます。体重やLDL・中性脂肪の状態に合わせた食事選びに役立ちます。

厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」を読む

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次の病気や状態と関連することがあります。ただし、検査値だけで診断はできません。

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参考・出典

情報の基準日: 2026-10-11。

数値だけで治療や服薬を変えないでください

検査値の解釈と治療は、症状、既往歴、薬、採血条件などによって異なります。再検査・精密検査の指示がある方や治療中の方は、結果表と薬の情報を持参して医師へ相談してください。